「愚策に次ぐ愚策」 亡国の中国と日本
中国の習近平体制下で、言論・出版・報道の思想統制が厳しく規制されだしたという。国家機密防衛と称するスパイ法で、アステラス製薬の50歳代の日本人男性が、「反スパイ法」違反の容疑で逮捕された。それもこれも、共産党一党独裁体制の維持のためだという。
共産主義がこのようなドグマに陥るとは、マルクスも予言できなかった。共産主義は、もはや社会科学ではなく、一種の聖典となり、習近平は唯一絶対の共産宗教の皇祖になりつつある。このまま中国が共産党独裁国家を維持すれば習近平は、現代のムハンマド(メッカに生まれ、神アッラーの啓示を受けてイスラム教の伝道を始めた唯一絶対の伝道者)と永遠に讃えられるだろう。神を否定する共産主義が、自ら唯一絶対の神の予言者として君臨するざまは、論理破壊したカルト集団に見える。
昨日の報道で知ったが中國では、明朝最後の皇帝崇禎帝(すうていてい)を題材に、9月に再出版された「勤政的亡国君(勤勉な亡国の王)」が、事実上の出版禁止となり、ネット検索もでき案くなった。おかげで、古本が数十倍で売れているという。
この本は、2016年12月に第1版が「崇禎往事」との書名で出版されたが、改訂に当たり題名と、本の宣伝帯が、習近平批判と当局の検閲に掛かったとされている。なんせこの国は、秘密主義なので出版禁止の理由は明かされない。
宣伝帯には、「愚策に次ぐ愚策、勤勉な王ほど国は滅びる」とあり、これが習近平を揶揄する政治批判だと、取り巻き連中が忖度したのだとウワサされる。本の内容は、今年5月に死去した歴史家の陳梧桐に揺る歴史小説で、17世紀の明の滅亡に至る過程を描いている。
崇禎帝(すうていてい)は、明の最後の第17代皇帝。崇禎帝の時代は、北に満州族の後金が侵攻し、南では李自成の反乱が多発した時期だった。崇禎帝は、政治に熱心であり、色事にふけることもなく、倹約を心がけていた。しかし猜疑心が強く、臣下を信用できない悪癖を有していた。即位直後から重臣を次々と誅殺し、在位17年の間に誅殺された重臣は総督7名・巡撫11名、罷免された者も多数あり、重臣達の士気の低下を招くこととなった。
明王朝の最後は哀れである。崇禎17年(1644年)、農民を武装蜂起させた李自成の乱により北京は包囲され陥落した。崇禎帝は息子たちを紫禁城から脱出させ、側室と娘たちを自ら手にかけて殺害した。反乱軍が北京を包囲すると、宦官・文武百官全てが崇禎帝を見捨てて李自成軍に降伏し、宦官の王承恩のみが崇禎帝のもとに駆けつけた。崇禎帝は、紫禁城の北にある景山で首を吊って自殺した。王承恩も皇帝の隣で首を吊って殉死した。
「愚策に次ぐ愚策、勤勉な王ほど国は滅びる」は、明王朝の最後を伝える史実だが、習近平の側近は、政治風刺と受け止めた。裏を返せば、習近平の政策が「愚策に次ぐ愚策」であると認めるものである。
中国は、共産主義による統制経済が限界を超え、もはや自由主義経済のサプライ・チェーンから除外されだした。生産拠点は、雪崩を打ってタイ・ベトナムに移行されだした。もはやいくら誘致政策を行おうが、政治リスクを恐れる欧米企業が中国に拠点を設けることはない。台湾のIT企業も、中国の侵攻リスクから熊本に拠点工場を新設している。情けないが、台湾より日本の賃金が安いこともある。中国政府の幹部や富裕層は、カナダ・アメリカ・オーストラリアに拠点を移し、息子たちを欧米に留学させ、市民権・永住権を取得させている。日本の都心部のマンションも、中国人が投資と、いざという時の退避用に購入している。
習近平は、愛国主義教育に力点を置いているが、ネット社会のなかで、情報は筒抜けである。日本の魚類輸入禁止も、国家扇動で行われたが、海外からの情報が拡散するにつれ鎮静化し、観光客も戻っている。日本近海の中国漁船は相変わらずだし、中国の二枚舌政策は、世界のもの笑いされている。
愛国教育は、情報を持たない貧民層には浸透するだろうが、高等教育を受けた若者には通用しない。統制が厳しくなればなるほど、優秀な人材の国外流出が進み、中国の没落が加速する。もはや習近平の共産主義経済政策では、没落に歯止めはかからない。さすれば習近平は、国内不満を海外に転嫁し、緊張感を煽る愛国精神の高揚に走る。台湾有事のリスクは高まるだろう。特に、パレスチナとウクライナの戦闘が長引けば、アメリカは台湾まで手が回らなくなる。虚を突いて、中國が動く可能性も高まるが、外相・国防大臣の相次ぐ失脚で習近平政権の立て直しに時間がかかりそうだ。軍部の上層部の腐敗も露見し、軍隊の士気を落ちている。しかし実態が見えにくい国なので、一寸先は予見できない。
対岸の火事と見下したいところだが・・・・足元の岸田内閣も「愚策に次ぐ愚策」、減税政策など愚の骨頂である。なぜなら財政規律などハチャメチャである。国債が増える一方なのに、借金を踏み倒し、税収が増えたので国民に還元すると愚民政策でゴマ化そうとする。日本国民はバカじゃないから、岸田の支持率は3割を切り、6割近い不支持率である。だが立憲の泉健太に期待する声もないし、自民党にも人材がいない。こんな無責任国家が国際的に信用されるだろうか。中国も日本も、債務超過のデフォルト国家には変わりない。