LEAK TL25 PLUS 修理記DSCF6355

このヴィンテージアンプは、20年ほど前に、秋葉原にあったアブコラボ徳永さんから譲りうけました。徳永さんは私のオーディオのお師匠さんで、私が行くと店を閉め、下の喫茶店でオーディオ長談義、時には飲んだりライブを録音したり、癌で亡くなるまで良き先輩でした。

イギリスのアンプと言えば、LEAKとQUADが双璧で、二つとも徳永さんから譲り受け今も所有しています。他に徳永さんに作っていただいた45プッシュプルとMarantz8B、MARANTZ7も徳永さん所有のものです。

店も締めたことだし、このさい4台ある真空管パワーアンプのうち2台を売りに出そうと整備を始めました。LEAK TL25 PLUS3年半前に一度整備し、その後聴く機会もなかった。久しぶりに真空管に火を灯すときは異常な音が出ないかとドキドキする。無事に音はでるが、左右の音量と音色が違う感じです。

このままでは売れないので、国立真空管アンプ研究会のWさんに診断をお願いする。普段なら会員全員で回路図を見ながら診断するのですが、コロナの3蜜を避けるため、主治医をWさんにお願いし、テレワークで皆さんに参加していただいた。皆さん大学電気科を出たエンジニアなので、理論も腕も確かだから安心してお任せできる。

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古いアンプの修理は、部品劣化や機械的接触不良、初期トラブルなど、原因を特定するまでに時間がかかる。劣化した部品は時間経過で突然に音が変わることもある。目視で原因がわかることはまれで、端から端まで回路を追って部品計測してもわからないこともある。意外なのは、ハンダ不良やアースがしっかり取られていないことが多い。原因さえ突き止められれば修理に時間はそれほどかからない。

前回は、電源トランス周辺を主体に修理したが、主要部品は、ほとんどオリジナルのままにしておいた。各パーツの劣化度を測定し問題は見つからない、ボリュームのバリがあるので分解清掃する。3日ほど内部診断したが原因が特定できない。

そこで何気なくアウトプット・トランスのインピーダンスを4Ω8Ω16Ωと差し換えたら、音量・音質が大きく変化する。アウトプット・トランスを分解し内部を点検すると、アース線の配線ミスが見つかった。出荷以降は開けない部位なので、60年前の出荷時から誤配線されていた可能性が高い。幸いにコイルの断線はなかった。

まさかこんな誤配線があるとはまず気が付かない。正しく配線し直すと音量・音質の変化と差はなくなった。

しかし、電解コンデンサーは生ものなので、この際、生きの良いものと交換することになった。

品名

NO

規格

変更後

ブロック電解コンデンサー

C1A,C2B

16μF、16μF/560V

22μF22μF/560V JJ

電解コンデンサー

C2A,CB

8μF、16μF/560V

22μF22μF/450V JJ

電解コンデンサー

C4

50μF/12V

50μF/50V  ニチコン製

電解コンデンサー

C5,C6

50μF/50V

50μF/50V  ニチコン製

電解コンデンサー

C3

F/350V

F/630V  ASCフイルムコンデンサー

セラミックコンデンサー

C7

1000PF

1000PF/500V  シルバード・ディップマイカ・コンデンサ

かくして蘇ったLEAK TL25 PLUSは、プリアンプにMacintosh MX110とつないで、エージング中です。

このアンプは、伝説上のÐ.T.N. Williamson回路をモデルに、Partridge output transformersを搭載し、BBCに採用された名機で知られています。出力管は、KT66EL34 5881、WE350B。KT88など6L6系のロクタル5極管ならどれでも差し替え可能です。現在はムラードのKT66で聴いています。

本来は、Leak Varislope III pre-amplifiersと接続して使用しますが、単独のパワーアンプとして使用できるように、RCA端子とボリューム付に改造されています。

また、BBC局用業務モデルなので、故障した際に部品交換しやすいように底蓋がありません。プッシュプルの出力管がセルフバイアスなので、2本がマッチしなくても差し支えありません。大変実用的な設計となっています。

音は局用モニターとして優れたリニアリティーの高い音色で、QUADⅡとは違ったくっきりと明瞭な音色です。同じイギリス人の設計製造ですが、TANNOYQUADとは異なる音作りです。

アンプ。スピーカーは音源により相性が異なります。主にClassic派か。JAZZ派か、vocal系かで組み合わせは異なります。しかし音色の好みは人それぞれ、味覚・臭覚・聴覚は個人差が大きいので、どれが絶対いい音などは決めきれない、というのが、11年間音楽喫茶をやって、お客様の評価を耳にした私の結論です。

また設置する音場空間でも音は大きく変わります。名機をもって、音を自分好みに育てることがオーディオの醍醐味ではないでしょうか。