隔月ごとに開かれる音の闇市も20回目。
歳月は4年を数え、第1回目から欠かさず参加された田中正男さんも、65歳を目に前にして先月24日に旅立ってしまった。人の一生って、早いものですね。
そんな訳で、旅だった田中正男さんを偲んで、オーディオ自作マニアの彼に相応しい曲を贈ろうと、第20回の記念闇市が昨夜行われました。
参加者は、固定メンバーとなった10人に正男さんゆかりの3人。同じく第1回目から欠かさず参加されるタマさんが横断幕を用意され、そこに持ち寄った贈る曲を、英語堪能のミノさんがすらすらと書きこんでくれたのだ。全員がサインし、正男さんの冥途のみやげにと奥様に手渡して、3時間半の昨日の会も楽しく散会となった。
ともかくこの会は、ジャズ好きで、ジャズについて一言語りたい連中のオアシスになりつつある。毎回愛好家垂涎のオリジナル盤を持ちこみ、自慢じゃないがと自慢するタマさん。惜しげもなく聴かせていただけるのはありがたい。
川崎TOPSのナベさんはプロだけあって、どっちかと云えば正統派に飽きたのか珍盤派。昨日はアセテート盤を持ちこんでいただいた。アセテート盤は、LPレコードを製造する前段階で、アルムニュームの上にニトロセルロースをコーティングして、レコード溝をカッティングしたものである。LP版よりも強度が低く剥離しやすい弱点を持つが、高音質で製造段階の試聴用としてもっぱら造られたものだ。
何回も針を落とすと、レコード溝が削られる恐れがあるのだが、レコード製造の初期の目的のためだけだから、それで問題ないのだ。ところでその音だが、米国盤のDIAHANN CARROLL。どうも市販前にボツになったようで曲目すらよく解らない。喉から手が出るほど欲しいいい音がした。欲しいと頼んだが、非売品だと断られてしまった。
半年ばかり前から常連になった地元代表のタダツさんは、フリー系ジャズにどっぷりと浸かった青春を過ごしたそうだが、50を過ぎて今や隠れ演歌・POPS愛好家。ボクと趣味が合うのだが、闇市では、そんな素振りは露ほども見せない。だいたいこの会で、演歌も好き・・なんてのはバカにされるのがオチなのだ。それでもボクは臆せず、ザ・ピーナッツのポピュラー・スタンダードLPからブルーカナリーとセンチメンタル・ジャーニーを掛けてやった。この盤はめったに目にしない貴重盤なのである。ミノさんの制止を振り切って、テネシーワルツも掛けてしまった。ピーナッツは大好きなのだ。
最後を飾ったのは、タマさん御自慢のオリジナル盤。デトロイトの愛好家から奪うように譲っていただいた代物なんだそうだ。なんでも以前に2nd盤を闇市で掛けたところ正男さんが痛く気に入られ、今回はオリジナル盤を持ちこまれたのだ。
盤はSTUDY IN BROWN。かのマックス・ローチとクリフォード・ブラウンが火花を散らす大熱演の大名盤である。レコーディングは1955年の2月。ブラウンは翌年の6月25才の若さで不慮の交通事故で亡くなってしまう。若き大天才である。
たぶんチェロキーを鳴らしたんだろうと思う。タムタムの音がほとばしり、ペットが夜空を切り裂くように唸る。その切れ味の良さは、ボクが持つ重量盤の再販盤とは雲泥の差を感じる。
EAST SIDEの音響システムともマッチし、ニートのNHK納入モデルのモノ針が真価を発揮してくれた。音の大吾味はここに至れりである。
天国の正男さんも喝采して楽しんでくれたことだろう。